MUSIC – ALBUM

Yuki Kawamura 1st Album "Love Forever"

loveforever


配信URL: ultravybe.lnk.to/loveforever
OIRAN MUSIC Bandcamp : oiranmusic.bandcamp.com/


<はじめに>

この世には既に数えきれないほどの名盤、名曲が存在しています。

音楽ファン、DJとして日々音楽に接していると、稚拙な自分のスキルでは名曲たちのパワーに近づけるような作品は産み出せないと、比較すればするほどに自己嫌悪の感情に長く苛まれていました。

それでも自分が作れる音楽作品の答えを求めて、答えというのは人に必要とされるということも含めて、自問自答を繰り返し、勇気を出して初めて自分名義のソロアルバム「Love Forever」を完成させることができました。

もちろんDJとして持ち合わせる批評性やスタイルだけを凝縮しただけのものではく、着想は個人的なことから始まり膨らんでゆきました。この世界に足りない愛と永遠のエネルギーを楽曲たちから感じてほしいです。一人ででも、ペットとでも、家族や友人たちとでも、そっとさりげなく聴いて傍において欲しい音像を紡いだつもりなので、長く愛されることを祈るばかりです。

<約20年ぶりに自身名義の音楽制作を再開するまで>

コロナ禍に現サウンド&レコーディング誌の編集長であり、House Violence名義でハウスミュージックのDJ&クリエイターとしても活躍していらっしゃる辻太一さんに強く薦められたことでした。同じ頃にファッションブランドによるマインドフルネス用の楽曲制作の依頼を、ファッションデザイナーの友人からオファーを頂き、重なった再起のチャンスにトライしないという返答は存在しませんでした。

それまでは自分自身には音楽制作の才能がないと諦めて、作詞家やプロデューサーとして制作現場に身を置く日々でした。長く在籍したSony Music Publishingを離れてフリーになり、コロナ禍に自分を見つめ直す時間もうまれ、自分が心からやりたかったことを、残りの人生はやってみようと思い始める瞬間がありました。

それはDJの師匠でクリエイターとしても尊敬する友人、スペインはIBIZA島のレジェンド、Jose Padillaが亡くなったこと。彼を弔う音楽を生み出したい!その想いは止まりませんでした。加えて父が亡くなったことも重なり、自分の中から湧き上がるエモーションを何かに記したくてたまらないと反芻する時間が増えてゆきました。そして作ったのが「R.I.P. Sunset」というアルバムの1曲目に入っている楽曲になります。此処から本格的に自分自身名義の音楽制作を再開しようと決意が固くなりました。

<アルバムという形態での発表を選んだわけ>

アルバム制作を本格的に開始してから完成までに約三年の月日が経ちました。それまでの期間、Koyasさんを始め素晴らしいミックスエンジニアの力を借りながらの楽曲リリースや、国内外の仲間のクリエイターによるリミックスやコラボレーション作品など、プロデューサーとして音楽で繋がった世界中の方々との共作も幾つか配信することができました。アルバム発表に至るまで、紆余曲折ありましたが、アルバムという形態に拘った理由としては、一貫した自分の描きたい世界観をクリアに刻んでおくことが、今とても大切に思えたのです。

<アートワークについて>

田中麻記子さんとの出会いは、「Ra」でもベースを弾いてくださったCOLDFEETのWatusiさんのご紹介で、渋谷花魁にてでした。翌日に六本木ヒルズで開催中の展覧会「Black Hawaii」にお邪魔して、マーク・リボー氏のオリジナル楽曲レコード付きの画集を購入。心から音楽が好きで、美味しいものが好きで、パリを拠点に創作活動を行う麻記子さん、意気投合するのに時間や距離は必要ありませんでした。その後も帰国の度に展覧会やグループ展に友達を誘って行ったり、ゆっくりお茶などさせてもらって、楽しい時間を過ごさせて頂きました。パリで展示予定の作品では私がモデルになっているものがあるらしく、SNSで拝見させてもらったりして、そんな自然な流れで「Love Forever」のカバーであり表情となるアートワークを、ぜひ描いてもらえないかとお願いした次第です。一番大変なアルバムの仕上げのターンは、麻記子さんから届いた素晴らしいアートワークが引っ張っていってくれたと思っております。なのでこのアートワーク含めて、音楽なのです。その領域までいけたのは、麻記子さんの音楽愛ありきですね。アートワークと表記していますが、出来ればアートワークという楽器をプレイしてくれた麻記子さんとクレジットしたいとところです。心から感謝しています。そして続編もお楽しみに!


<楽曲解説>

01 R.I.P. Sunset ft. 斎藤ネコ

この曲はまさに20年ぶりに本格的に自分自身名義の楽曲を制作するキッカケになった曲です。師匠であるJose Padillaを弔うために作りました。原曲のリリースは2021年で、これまでにHouse Violence氏によるハウスミックス、TREKKIE TRAXのAmps氏がオマージュしたミレニアムのバレアリックトランス風リミックス、KH&The LASTTRAKによるラヴァーズダブバージョン、HIROSHI WATANABE aka KAITOによる荘厳なリワークが配信リリースされ、交流のあるクリエイターの再解釈を楽しむことができる作品としても機能してくれました。その最終形態が斎藤ネコさんのバイオリンを全面的にフィーチャーしたこちらのバージョンとなります。ネコさんとは約10年以上の付き合いで、DJとバイオリンの即興セッションのプロジェクトで、一緒にフェスやイベントに幾つか出演させていただきました。「りんご音楽祭」出演時に弾いてくださったものを再現したく、満を持してレコーディングに至り、スタジオでは見事に一発で録り終えました。フルバージョンは9分あるのですが、アルバムにはショートバージョンを収録することにしました。追ってそちらも配信を予定しております。ちなみにバイオリンのレコーディングはam8プロジェクトを筆頭に、様々な形でご一緒させてもらっているマジカルコンプリーターの冨田さん自ら担当して下さいました。


02 Adios Ayer ft. Naz (Album Mix)

師匠、Jose Padillaが99年にリリース、その後にMadonnaの誘いでWarner Music傘下のマーヴェリックで2001年にアルバムをリリースした際には、歌唱にSEALを迎えて再録もされたバレアリッククラシックス「Adios Ayer」のカバーになります。私自身初めてのカバーで、この曲は人生で出会った曲の中で一番好きと言っても過言ではない楽曲なので、とてもハードルが高かったのですが、Nazという素晴らしいヴォーカリストとの出会いが実現を決意させてくれました。Nazはデビュー当時に沖縄から私のラジオ番組にゲストで来てくれて知り合い、その後もバレアリックDJの現場で冨田ラボさんとの「Ocean」やWONKの江崎さんプロデュースの名曲「Fare」をよくかけさせてもらっていました。那覇のLittle Rockersで久しぶりにライブを見て、カバーをするならヴォーカルはNazしかいないと強く思いオファーの相談をすると、快く応じてくれました。Co-Produceには今までに多くの作品で関わらせてもらった良き理解者であるHideo Kobayashiさんを迎えて、那覇でのレコーディングにも帯同してスタジオ環境もコーディネートして頂きました。ギターには共通の友人で、韓国ソウルの人気DJのCityboy from SeoulことJun Young氏が弾いてくれていたり、幸運だったのは関わってくれた皆がJose Padillaの功績と私の想いを深く理解し寄り添ってくれたことが何よりでした。ちなみに8月中旬にリリースの7インチレコードのバージョンとは少しだけミックスが違うアルバムバージョンを収録しております。


03 Ra

アルバムは全体的にバレアリックを主軸にアンビエントやチルアウトの要素が強い仕上がりになるだろうと想定して制作を進めておりましたが、同一線上で聴けるDJセットでも使えるダンストラックを作りたいと思って生まれた楽曲というわけではなく、一度断捨離したにも関わらず再び最近二年ほどレコードの収集にハマったのを機に、流れでSUN RAについて考えていたら産まれた不思議な楽曲です。私が作ったベーシックトラックにi-depなどの現場でご一緒していたGeorge Kanoさんにドラムやパーカッションを中心に色々と生演奏を入れて頂き、そちらに長いお付き合いでソロアルバムのプロデュースを担当させていただいたこともあるCOLDFEETのWatusiさんにベースを弾いてもらい、そこに私自身のボイスや個人的に一番のキモになっている踏切みたいなサウンドエフェクトなどを追加して、最終的にHouse Violenceの辻太一さんによる神がかり的なミックス&トリートメントを施して頂き完成に至りました。国内外の様々なDJの友達に人気の楽曲となり個人的にも嬉しく、この路線の拡張を次作以降はトライするべきだと思うばかりです。不思議な可能性を秘めた曲だと思うので、時間がかかってもレコードで海外に流通されるチャンスがあればと願うばかりです。


04 Magic ft. COLOR FILTER

Yugenという曲でギターを弾いていただいた恒吉さんともう一曲何かやりたいと思い、ベーシックトラックを送らせて頂いたところ、音のみならず更に詩をのせた方が良いなどのアイディアを打ち返して頂き、最終的に恒吉さんのプロジェクト、COLOR FILTERをフィーチャーした楽曲として完成に至りました。冒頭とラストのボイスはCOLOR FILTERのヴォーカルの多賀みなみさん、詩の英訳とリーディングはAmy Grayさんが参加してくれました。1曲の中に様々な声の要素が入る楽曲にしたいという想いが強くあり、理想が叶った限りです。昨年の江ノ島展望台で開催された「夕陽と海の音楽会」に私が出演した際に、Calmさんもライブ出演していたのですが、恒吉さんが同じ高校の後輩だということで遊びに来てくださり、そのご縁で先行配信となったリミックスバージョンの制作にも繋がってゆきました。楽曲のリファレンスで、Andrew Weatherallや今年再結成の噂もあるThe Sabres of Paradiseを挙げていたこともあり、Diesel Disco ClubのDJ SHIKISAIによるフロアライクなダンスリミックスのリリースも控えております。ライター作家として活動してきた自分と、DJとして活動してきた自分の感覚を、色々な方々の力を借りて融合できた作品となりました。こういうコラボはもっとやりたいと思っています。余談ですが書き上がった私の詩を見た恒吉さんに、ランボーみたいと言われた時に、そう表現してくれたのは私の夫と辻太一さんに続いて3人目だなぁと、ふと静かに笑いました。


05 Koko

ここまでの楽曲たちは勝負曲というか、表向きな作品の収録が続いていたと思います。今作は将来的にレコード化されることを願って作っているので、この曲はA面のラストかB面1曲目を想定したものになります。ここからは非常に内省的でプライベートな楽曲のターンの始まりです。アルバムの7割は長く暮らした渋谷から大磯に拠点を移してから作ったので、雑音が少ない静かな暮らしの中から生まれたもの。この曲はバリ島にDJで行った際に、ニュピ(バリヒンドゥー教徒の精神修養の日で、断食と瞑想に専念するために火や電灯の使用が禁止され空港も閉鎖)を体験したことから、インスピレーションを得ました。他に滞在的な影響として、中高生の頃から愛聴している細野晴臣さんの名作「Medicine Compilation」があります。今作で3曲も参加してくださっているGeorge KanoさんのパーカッションやSEと、幾度となくイメージに近づける為にやり取りを重ねて下さったミックスのKoyasさんには感謝しかありません。


06 Sprout

大人になってからの青春に体験した2000年代のエレクトロニカ、フォークトロニカへのオマージュを表現したくて作った曲。感受性の芽生えということなのか、気がついたらこのタイトルを作業画面に記入していました。疑うこともない無意識の判断やクリエイションは何処からやってくるのでしょう?記憶と体験という財産が突き動かす衝動は相変わらず止まりません。渋谷の自宅を引っ越す寸前に出来た曲なので、ちょっとだけ懐かしい東京らしさが漂っているかもしれません。


07 Yugen

COLOR FILTERのライブを幾度か拝見させてもらう度に、恒吉さんのギターの七変化具合に驚かされてきました。Roberto FrippとBrian Enoの名盤「No Pussy Footing」みたいなギターを弾いてもらいたいという妄想が膨らんで作った曲。Yugenというタイトルは、Netflixで見たジュリー・デルピーが主演のドラマで幽玄という感覚は日本語でしか表現できないみたいな会話のシーンがあり、印象的だったのでそのまま使いました。Sprout同様、あまり考え込まずに出来た作品なので、今後も気負わずにこういう作品は量産してゆきたいなと思いました。ちょっとシネマティックなサウンドに仕上がったと感じているので、いつか映像作品で使われたら嬉しいなと。


08 Dawn

2023年末にバリ島を訪れた際に、ホテルの部屋で8割くらい出来た楽曲。何故か夜明けと共に目覚めることが多く、当時はまだ渋谷に住んでいたこともあり、鳥の声や朝のプールの冷たさに刺激を受け堪能する中で、夜明けの美しさを表現したくなり作りました。R.I.P. Sunsetとは無意識で対になっているのかもしれません。辻太一さんが丁寧にミックス&トリートメントしてくださり、2024年春に配信となりました。その後、沖縄で再会したyamp koltによるダンサブルなリワークをリリースしましたが、ガムランが入った静かなバージョンも存在しており、そちらをアルバムに収録予定でしたが、曲順や質感を熟考した上で原曲バージョンを収録することにしました。そちらのバージョンも追って発表予定なので楽しみにしていてください。


09 Love Forever

ピアノのループをベーシックに、進行するトラックが好きで、シングルでリリースした「Yuki」の延長線上にある楽曲のような気がします。アルバムのタイトル曲なので、世界観を総括するようなシグネチャー的な曲でもあり、かといって大きな主張があるわけでもない独特な立ち位置の楽曲。インタールードのようでもあり。この曲もKoyasさんと幾度となくミックスのやり取りをさせて頂き、理想とする着地点に辿り着きました。作業の中日に代々木公園で友人の会社の花見でKoyasさんに対面し、そこでミックスの見解を伺って色々と納得できたことも前進する上で大きかったです。


10 Sacred Places

2000年にリリースされた「The Returning Sun」というコンピに収録されていたBayakaの「Grass High」という曲がずっと好きで、今でも時々DJでかけるのですが、25年の歳月を経て何かこの楽曲に対するシンパシーから拡張した作品をつくりたいと思いました。永遠の愛の先にある聖なる場所とは何だろう?そんなことをイメージしながら、気がついたら珍しく自分で歌まで歌っていたので、本当に不思議です。George Kanoさんのパーカッションは歌うようで、リズムというよりもはやデュエットですし、Koyasさんのミックスもきっと大変だったと思うのですが、素晴らしい理想の音へと導いてくれました。この音楽が鳴り響く場所はsacred Places = 聖なる場所であってほしいと思うばかりです。


感想と応援コメント

Yuki Kawamuraの本人名義、初アルバム「Love Forever」が届いてから、いったい何度聴いただろう。この二十数年間、音楽シーンの枠を超えた様々なプロジェクトに磨かれ、ひとまわりもふたまわりも大きく、しなやかになった彼女の現在地を示す楽曲たちは生命力にあふれ、誰もの日々を輝かせるだろう。

でも彼女が食虫花を意味するヴィーナス・フライ・トラップと名乗りながら真夜中の街を生き延びていた時代、また剥き身の川村由紀として、児童虐待や、性自認をめぐる葛藤に苦しんだ幼少期からの出来事を書き起こした2007年の書籍「アスファルトの帰り道」、そして事あるごとに聴かせてくれた懐かしいデモテープの数々を記憶する自分は、此方から彼方へと孤独な惑星のように流浪してゆくアルバム後半の繊細なサウンドスケープの中に、あの頃のYuki Kawamuraを見てしまい、涙なしに聴けなかった。彼女の旅は結局まだ続いていて、でもそれは今、こんなにも美しい軌道を描いているのだ。

七尾旅人 (シンガーソングライター)

お会いするたびに目を輝かせながら、ミドルティーンの頃に「Suburbia Suite」から影響を受けた思い出を、本当に大切そうに話してくれるカワムラユキさんは、敬愛するバレアリック・レジェンドJose Padillaとの共演も含め、江の島・シーキャンドルサンセットテラスでの「夕陽と海の音楽会」のレジデントDJとして、何度も素晴らしい音楽のある風景を共にしてきた、愛すべきロマンティストです。
と同時に僕は、渋谷の街の片隅で、ときに逆風に吹かれることも多い中で、それぞれの道を歩んで夢を追ってきた同志であり戦友のひとり、という特別な感情も抱いています。

初めてお会いしてからもう10年近く経ちますが、ついに発表されたファースト・アルバムは、タイトルもずばり『Love Forever』。チルアウトもダンスも美しいマジック・アワーの光景に溶けこむような、シネマティックそしてバレアリックな世界観・音楽観に彩られていて、Yuki Kawamuraとしての人生と哲学が映しこまれているように、僕は感じました。
ジャケットのペインティングもとても素敵ですね。甘美な感傷に誘われる、「R.I.P. Sunset」と題されたオープニングからJose Padillaの名曲カヴァー「Adios Ayer」への流れを初めて聴いたとき、僕は胸にグッとこみあげるものがあって、ちょっと放心状態になってしまいました。

2025年7月 橋本徹(SUBURBIA)

水分を含んだ水彩絵具がじっくりと浸透していくようでした。
夏の真昼、ひらけた空に入道雲も見えるし、明け方の、少し肌寒く薄暗い道で聴くにも、似合う気がします。さまざまな表情を見せる楽曲の中、海の向こうや、目に見えないものを信じようとする眼差しを感じました。
そこには、境界を感じない緩やかに滲む線で描かれていました。

北村蕗 (音楽家/シンガーソングライター)

リリースおめでとうございます!
いまのVenusにしか描けない、 愛がぎゅっと詰まったアルバムだと思います。
昼下がりにお香を焚いて、 飼い猫と一緒に聴いたら、 小さな楽園がそっと心に誕生しそう。
創造の幅が広がり、 バレアリックで身体がじんわり満たされるような、 そんな一枚に感じました♡Love Forever.。.:*・゚

heykazma(DJ / トラックメーカー)

見知らぬ楽園。
訪れたいけれど、生身の肉体で訪れることは出来ない楽園。
だけど聴いている人のそれぞれの頭と心の中にだけ、存在する楽園。

すべてをゆだねても、
すべてをそのまま受け入れてくれるというよりは、私たちがきちんとまっすぐ軸を持ち立っていないと、本当に手を広げてくれない楽園。

永遠に瑞々しい、
掴むことの出来ない幻のような、息を飲むくらい美しい、焦げはしないくらいの熱いピンクの夕焼けは、傍らで味方のように見ていてくれる。

細やかな、あらゆる音色とリズムを、そんなピンクの楽園が大きく包んでいるような作品。

田中麻記子 (画家)