ミュージシャンやDJ等、音楽好きな人々が集う渋谷は道玄坂のウォームアップ・バー、しぶや花魁が監修する初のコンピレーション作品! DJや作詞家、プロデューサーとしても活躍する、ヴィーナス・カワムラユキが運営する個性的なこのお店に集う国内外アーティストが新曲や初CD化音源の贅沢な作品をコンパイルした、夜遊びの前のウォームアップ・ミュージック作品集!!
- サーカスナイト (Seaside Magic of L&B)
– 七尾旅人 - ロンドンは夜8時 (AMWE x 環ROY Version)
– London Elektricity - Welcome To Tokyo ft. ナマコプリ&サオリリス – Sakiko Osawa
- PositiveNoise(Sakiko Osawa OIRAN Mix)- System 7
- Got Moves (OIRAN Radio Edit) – Saga Bloom Vs. Remundo
- Tokyo Disco Beat(Radio Edit)- Sakiko Osawa
- Mambo Mambo(Club Edit)- i-dep
- ナマコプリのトラップ – ナマコプリ
- Oiran Do-Chu – Mijk van Dijk ft. DAFTY
- Come On-A My House – COLDFEET
- Oiran Sessions – daurade ft. AO
- Clear Rain(Midori Aoyama Remix radio edit)- Rasmus Faber feat. Kirsty Hawkshaw
- SakuraChill – Haioka
- hikari(T-ak & Toby on Drei Monday Remix)- Language
- blue breezin’ Featuring ken kaizu – Quiet Birth a.k.a. Shiba
History
初めて訪れたとき、ここは、床も壁も天井も、空気までもが灰色だった。一歩足を踏み入れると、春はもうとっくに来ているというのに背筋がゾクゾクとして、数分いるのが精一杯だった。にもかかわらず、外に出た私は、これからここで始まることを想像してとても高揚していた。湧いてくるイメージは、どこまでもカラフルだった。
「しぶや花魁」その扉を開く。
2010年5月27日、渋谷道玄坂にてその扉を開いた「しぶや花魁」。プロデュースしたのは、作家、作詞家、DJとしても国境を越えて活動するヴィーナス・カワムラユキ(以下、VKY)。自身の活動を通じて世界中の文化と一流のもてなしを体感してきた彼女は、イビザ島のウォームアップ・バーから得たインスピレーションと日本の立ち飲み文化に独自のエッセンスを加え、コンセプトを練り上げた。それカタチとしたのは、三人の男。内装を手掛けたのは、VKYの古くからの友人であり、「しぶや花魁」を運営するDGZP LLCの代表でもあるスペースデザイナー、さとうこうじ。リノベーションに特化したオリジナリティ溢れる次世代向け物件を取り扱う、「密林不動産」代表のあかしゆうじ。そして音響を手掛けたのは、サウンドデザイナーのAO。生気のまるで感じられなかった灰色の古民家を、“日本の赤”と古材を用いてリノベーションし、ヴォリュームを上げても会話と飲食を楽しめる上質な音で満たすことによって、VKYのイメージした空間へと生まれ変わらせた。
3週間のプレオープン期間を経て迎えた6月18日のグランドオープニング・パーティーは、どしゃぶりの中、木造の建物から蒸気が上るほどの熱気に包まれた。
VKYが当初から「バンドメンバー」だと言っている彼女を含む経営陣と現場スタッフは、時にぶつかり合い、もがきながらも毎夜ステージに立ち続け、絆を強くし、家族のような関係を築いていった。その家族の輪は、常連客も巻き込み大きくなっていく。ここでは、毎日のように通う“ご近所さん”のことも、久しぶりに来店した常連客のことも、スタッフが「おかえりなさい」と迎え入れる。それに対する返答はもちろん、「ただいま」である。1周年を迎える準備を始めた頃、「しぶや花魁」は東京の社交場として、そして“帰る場所”として、毎夜色とりどりの人間模様、いや、家族模様が繰り広げられる場所となっていた。
2011年3月11日、消さなかった灯り。
“眠らぬ街”渋谷が、夜になるとネオンを消し息をひそめ、関東を中心に、「夜を楽しくしたい」というVKYの願いとは裏腹な風潮が生まれる。しかし、「しぶや花魁」は眠らなかった。キャンドルを灯し、カセットコンロで煮出した暖かいチャイやホットワインを用意し、自宅で心細くしていた常連客を迎え入れた。VKYは、ウォームアップ・バーというコンセプトに、「ここから日本をあたためたい」という願いも込めるようになる。
芯から熱く、芯まであたたかく客人をもてなすVKYとスタッフの熱は、道玄坂をあたため、その熱は月日と共に渋谷、東京、全国へと広がっていった。飛び火のように、海外にまでも。気づけば渋谷のクラブへ通うクラバーはもちろんのこと、道玄坂で働く“ご近所さん”から渋谷の夜を熱くするDJ、ライブイベントやアートイベント後のアーティスト、さらには海外から来日中の要注意人物まで、世代、ジャンル、国境を越えた“人間”が集う場所となっていた。
世界中から人と情報が集まり、交わり、そして発信されるカルチャースポットへ。
『TYO magazine』編集長・カネコ ヒデシ氏は、「しぶや花魁」を「人間交差点」「渋谷の情報発信基地」と表現する。非常にありがたい表現だと感謝すると同時に、身内ながら、本当にその通りだと思う。ここでは、新しい出会いはもちろん、再会の率も非常に高い。ここでの出会いと再会からどれだけの企画、カルチャーが生まれただろう。これらはオープン時の「若いころには渋谷で遊んでいたのに麻布や青山に散っていった大人たちが渋谷に戻ってこれる場所(=2F)」「帰ってきた大人と、リアルタイムに渋谷をさまよっている若者が交流できる場(=1F)」をつくりたいという思いが生き続けていることと、あえて個室を作らなかったVKYが総指揮者として精身のかぎりを注いできたこと(もちろんスタッフの努力と成長も見てきた)、ここで交わる「しぶや花魁LOVER」の愛の深さによるものだと思う。こうして世界中の人と情報が集まり、交わる“人間交差点”となったからこその、“情報発信地”なのである。
そしてついに、その“人間交差点”の模様がCDとなり、“情報”として“発信”される時が来た。
VKYのバースデーシーズンである夏の記憶から始まるこの1枚には、「しぶや花魁」の架空の1年が表現されているが、Track Listに並ぶ名は全て、実際に「しぶや花魁」に縁のある人物の名である。
Tracklist
1.サーカスナイト(Seaside Magic of L&B)- 七尾旅人
七尾旅人氏が親友VKYのバースデーのために明方駆けつけて披露したシークレットライブwith U-zhaanは伝説。「(2010年の)ベストアクトだった」とは本人談。リミックス担当のLUVRAW&BTBは「しぶや花魁」でZEN-LA-ROCKのPVの撮影をしたことも。
2.ロンドンは夜8時(AMWE × 環ROY Version)- London Elektricity
「しぶや花魁」から誕生したアンセムの、配信限定リミックス・アルバムに収録されている環ROYによるラップをフィーチャーしたバージョン。「10年前と現在」をコンセプト にVKYが書いた日本語の詞とAMWEの歌声がクラバーたちの心を掴んだ、通称「ロンパチ」は、m-floの☆Taku Takahashiが設立したダンスミュージック専門インターネットラジオ、block.fmの開局と共に火がつき、全国各地のクラブで午前4時のフロアを沸かすことに。後にアーケードゲーム「Dance Dance Revolution」にも収録される。2012年のロンドン五輪の会期中、フェンシングの太田選手が現地で聴いていると発言したり、映画の撮影のためロンドンに長期滞在していた女優の柴咲コウさんが、現地からTwitterで歌詞のフレーズをツイートするなど、アンダーグランドから様々な可能性を揺さぶった一曲。その後、VKYと柴咲コウさんは、雑誌『GINZA』にて対談。「しぶや花魁」にて撮影した二人のツーショットと共に、国内の雑誌媒体で「しぶや花魁」が紹介された初の記事となる。
3.Welcome To Tokyo ft.ナマコプリ&サオリリス - Sakiko Osawa
「しぶや花魁」にて出合った3つの才能が、このCDの為にコラボレーション。タイトルのフレーズは、海外からの来客が多い花魁で、VKYがある夜に思いついたもの。芸術家アイドルユニット「ナマコプリ」として活躍中のナマコラブとマコ・プリンシパルは、「しぶや花魁」の姉妹店として代々木ビレッジにオープンした「代々木カリー」のコマーシャル映像やディスプレイ用の絵画を作製。渋谷PARCOの「シブカル祭」でも20Mにも及ぶ壁画「ギャルニカ」をプロデュースするなど現代のアートシーンを牽引するアーティストとして知られる。コスプレアニソンDJとして全国で活躍中のサオリリスは、今作のアートワークスを手がけた人気ブランド「THE TEST」の佐藤立志と共に、Ustream番組「しゃれおつカンケイ」を「しぶや花魁」や「代々木カリー」などからO.Aしている。
4.PositiveNoise(Sakiko Osawa OIRAN Mix)- System 7
開店当初より来日する度に訪れているSystem 7の名曲を、このCDのためにSakiko Osawa(OIRAN MUSIC)がリミックス。2月にアムステルダム「club Nl」にて行われたSakiko Osawaのデビュー記念ライブで、ラストの1曲として初披露された。
5.Got Moves(OIRAN Radio Edit)- Saga Bloom Vs.Remundo
アムステルダムからリリースとなったSakiko Osawa(OIRAN MUSIC)「Tokyo Disco Beat EP」のレーベルである「7 Stars Music」オーナー、Saga Bloomの歌う名曲をこのCDのためにエディット。
6.Tokyo Disco Beat(Radio Edit)- Sakiko Osawa
2014年2月6日、「しぶや花魁」から生まれた音楽ブランド「OIRAN MUSIC」のプロデュース第一弾として、アムステルダムのレーベル「7 Stars Music」からSakiko Osawaのデビュー作「Tokyo Disco Beat EP」が世界配信された。東京から世界を踊らせたいというコンセプトで「渋谷⇄アムステルダム」を実現。リリース日には、iTunesエレクトロニック アルバムチャート2位、総合30位をマーク!圧倒的な感性は「しぶや花魁」の現在を象徴する作品を産み出してゆくことでしょう。
7.Mambo Mambo(Club Edit)- i-dep
あるときは渋谷でのDJ前に、またあるときはオリジナルアルバム「DA BASE」リリースライブの打ち上げで訪れるなど、「しぶや花魁」愛の深いナカムラヒロシ(i-dep)「Mambo Mambo 」の秘蔵エディットバージョン。同曲のデモを、平日の夜に店内でかけたことも。VKYはナカムラヒロシとCanaによるSotte Bosseの作品にて作詞を担当するなど、共に新たな作品をつくり続けている。
8.ナマコプリのトラップ – ナマコプリ
渋谷での活動も活発な芸術家アイドルユニット、ナマコプリ(マコ・プリンシパル&ナマコラブ)による初のオリジナル曲。作詞はVKYが、サウンドプロデュースはタイチマスターが担当。日常に潜む罠と音楽のトラップをテーマとし、実体験を題材に作られた。ナマコラブの創造するキャラクターが総出演するビデオクリップは必見!
9.Oiran Do-Chu – Mijk van dijk ft.DAFTY
来日の度に訪れ、2013年のWIRE出演時には、SHIBUYA OIRAN Tシャツを着用してステージに立って「しぶや花魁」への愛を見せてくれたマイク・ヴァンダイクと、渋谷のいたるところで撮影した「SUSHI TRAIN」のPV(「しぶや花魁」も登場)が話題のDAFTY(mimi&vivi)による共演曲。作詞はVKYが担当。渋谷道玄坂での花魁道中とベルリンでのラブパレードが時空を超えてひとつのストーリーになる。
10.Come On-A My House - COLDFEET
11年前に発売した「Jazzfeet」というアルバムから、江利チエミのカバーを収録。Lori Fineが日本語で歌う作品は数えるほどしかリリースされておらず、貴重な作品。平日の夜に海外から遊びにきたファッショニスタに人気。COLDFEET のwatusiは、徒歩30秒の場所に位置する「MICROCOSMOS」と「しぶや花魁」との行き来が自由にできる回遊型ディスコパーティー「ETERNAL」を開催したことも。クラブ関係者で行っている道玄坂の掃除活動前に顔を出すなど、「しぶや花魁」のご近所環境を支えてくれている兄貴的存在。
11.Oiran Sessions - daurade ft.AO
「しぶや花魁」の店長であり、和太鼓奏者でもあるチョウアツヒロの和太鼓ユニットdaurade と、店内のサウンドシステムを担当したAOによる初のコラボレーション曲。
12.Clear Rain(Midori Aoyama Remix radio edit)- Rasmus Faber feat.Kirsty Hawkshaw
来日の度にバンドメンバーを連れて訪れるラスマス・フェイバーの「Clear Rain」。CLUB OIRANのレギュラーパーティー「Thursday Parlour」のオーガーナイザーであるDJ Midori Aoyamaによる、初めての公式リミックス作品。ボーカルが90年代の伝説のユニット、Opus 3のKirstyというのもサプライズ!
13.SakuraChill – Haioka
BREHMEN、The KAHの活動で知られるHaiokaが新曲として制作した和エレクトロニカ。年に一度、花見の季節に彼が「しぶや花魁」に施す桜のディスプレイは、春の訪れを感じる大切なワンシーンとなっており、楽しみにしている常連客も多い。この曲を聴きながら桜を見てチルしてほしい、との願いを込めて。
14.Hikari(T-ak & Toby on Drei Monday Remix)- Language
「しぶや花魁」にてサンデーアフタヌーンライブを定期開催していたLanguage。3.11の震災直後に予定されていたライブを悩み抜いた結果実行し、不安の中で生活していたファンと「しぶや花魁」の常連に暖かい集いの場を提供するなど、共有する思い出は多い。アルバム「magure」に収録されている同曲の作詞はVKY、リミックスはいつも変わらず「しぶや花魁」を支え、大切なシーンには欠かせない存在のDJ TOBY、そしてT-akによるもの。(このコンビによるロンパチのリミックス作品もあり)春の光 - Hikari - が差して、このCDもクライマックスへ。
15.blue breezin'Featuring ken kaizu - Quiet Birth a.k.a.Shiba
江ノ島のパーティー「Freedom Sunset」のオーガーナイザーとしても数々の伝説を生み出してきた音楽家、shibaによる楽曲。「Freedom Sunset」にはVKYもDJとして出演しており、2013年の開催時にはSakiko Osawa(OIRAN MUSIC)もサンセットライブを披露している。この曲と共に、また夏が訪れる———
フリーランスのPRとして店作りに関わりながらも、自分のことを外部の人間だとは割り切れなかった私は、この原稿をどういった目線で書けばよいか、ずいぶん悩みました。
そして、悩みに悩んだ結果、この話を依頼されたときから「醍醐の目線で」と言われていたことを思い出し、私の目線で書くことにしました。
心を「しぶや花魁」の中に置いて、4年前の一本の電話から振り返り、私の目線で書いた、Histry~「SHIBUYA OIRAN WARM UP MUSIC」紹介です。
途中から、ヴィーナス・カワムラユキを、VKYと書いていますが、私自身、文中でどう呼ぼうかとても迷いまして…。みなさんにも、ヴィーナス、ヴィーちゃん、ヴィーナスさん、カワムラさん、ユキ、ユキちゃん、などなど、ご自身が普段呼んでいる呼び名で読んでほしいな、と思ってこうしてみました。
私の、そしてみなさんの中の「しぶや花魁」Histryが、今後も色鮮やかに続いていきますように。
醍醐由貴子